『絵本を抱えて部屋のすみへ』

さて特に記念しても仕方ないですが、第一弾は”小説”を。
信頼【★★★★☆】
読易【★★★★★】
意義【★★★☆☆】
コメント:非常に読みやすく、また表現の中に幸せな宝石がたまにある。

絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

江國さんの文章は、言葉がよく選ばれていて繊細でやわらかな感じがする。

もともと、私は絵本の中の世界の感じがすこし好きなのだけど、その感覚がこの小説にはきちんと含まれている。
私たちは日常に生きていて、仕事をしたり電車に乗ったりたまにはホテルでご飯を食べたりするのだけど、ふっとした瞬間や切欠で昔の記憶がよみがえって来ることがある。それは身近な人が大切にしていた宝箱のような、密やかな幸せに繋がる記憶をもっていて、日常から少しちがった世界に連れて行ってくれる。でも、それは現れたときと同じようにまた、ふっとどこかに過ぎていく。
たまにそんな世界に戻りたくなったら、開いてみてもいいだろう。