『憂愁のノクターン』――フジ子・ヘミング

評価【★★★★☆】

ちょっと前よくメディアで名前をよく目にしたけれど最近は落ち着いてきたのだろうか。

今世紀最大の作曲家・指揮者の一人と言われる、ブルーノ・マデルナにウイーンで才能を認められ、彼のソリストとして契約したことは、フジ子が最も誇りにしていることのひとつである。ちなみに、この契約に際しては、フジ子の演奏に感銘を受けたレナード・バーンスタインからの支持、及び援助があった。

しかし“一流の証”となるはずのリサイタル直前に風邪をこじらせ、聴力を失うというアクシデントに見舞われる。失意の中、ストックホルムに移住。耳の治療の傍ら、音楽学校の教師の資格を得、以後はピアノ教師をしながら、欧州各地でコンサート活動を続ける。

ベートーヴェンもそうだけど、ピアニストや作曲者が聴力を失うというのは辛い。
耳の治療をしながらコンサート活動を続けた、という彼女の永い月日を思ってしまう。


指の衰えというのはやはりあるのだろうと思うけれど、それでも優れたテクニックと才能が感じられる。
音の切り込み、存在感のある強弱や揺らめくゆれ、まとまって押し寄せてくる音、意図的なタイミング、それらがコントロールされながら統一的に情感をもって表現される。
今度コンサートに行ってみたいな。