金融理論ってどんなもの?

知人から「この著者を知っていますか?」といった内容がメールの一部にあった。
その著者、稲葉振一郎さん(id:shinichiroinaba)の本は学生時代にナウシカ解読―ユートピアの臨界を東大の友人から借りて読んだ思い出がある。もう10年も経つか…。
その頃はエヴァなんかもまだなかったから、アニメや漫画を教養的予備知識などを援用して読み解いたり考察する類の本が比較的少なくて、自分的にはなかなか面白かったおぼえがある。
今回の知人からのメールと、はてなの以下の質問を期に軽く一冊読んでみた。
貨幣の概念のない世界から、ひとりの女の子がやってきました(かわいくて理解力があります)。さてあなたは貨幣の仕様を作り、彼女がその後お金を使えるように教えてあげてください。1、「貨幣」システムの仕様書を作成してください。2、作成する上で考えたことや感想をコメント願います。※UMLやマインドマップを使っていただくと分かりやすくてよいですが、箇条書きや文章でも可。※仕様が込み入ると思いますので、全体像がムリであれば、自分で的を絞って設定してください。例えば「為替」「オークション」「貯金」など。※難しいと思うので、完成度低くても仕方ないです。気軽にトライしてください。


さて読んだのは、稲葉さんの「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)。内容の大枠を掴むには本人が書いているこちらがわかり易いだろうか。


はじめの「所有」論では、ゲーム理論を交えた経済合理性の話や、法と利益あるいはホッブズやロック、ルソーの「国家」についての視点はなかなか興味深い。特に所有・侵害・法は自分のなかでのテーマの一つなので頷きつつ読むことができた。
「市場」論は興味があれば読むといい。それ以降までゆくと社会学などきちんと勉強していない私には、政治的色彩もチラついてあまり入り込んで読むことが出来なかった。
既存の知識体系を複雑に組み合わせて語られる内容は、定量的な理論に比べ読者の恣意性が広いように感じて何かを理解するときには不向きなように感じる。インスピレーションを受けたりすることには良いと思うのだけど。
最近はゲーム理論も広がりを見せているようだから、そのうちそちらの知識も仕入れてみたいと思った。


では、定量的な理論ってなにをさして使っているかというと市場に関して言えば金融理論についてだ。いわゆる経済のマクロとかもイマイチ大雑把過ぎて、個人的な理系的視点からすると理論としては認められない。論理のレベルだと思う。
金融リスクの理論―経済物理からのアプローチ (ファイナンス・ライブラリー (6))。こんな感じのが金融理論の基本書かなと思った。
ノーベル賞の経済部門でも、こういう金融理論関係の人がよく受賞してたみたいだしアメリカ辺りでは一昔前は頭のいいのがいくのは金融かNASAかという話があって、その金融はこれ系のことだと思われる。日本の経済学部じゃなかなか教えられないだろな。
ただ本の中身をざっとみると、利益行列(だっけ?)とかその固有値分析とか、つまりデータマイニング的色彩が濃いのかなと思った。
もちろんそういうのだけでなく、特に最近はRMTを市場に見立てた理論なんかも研究が進んでいるようで面白い。RMTってわざと書いたんだけど、ゲームのリアルマネートレードのことでなくて数理統計学から始まったランダム行列理論(Random Matrix Theory)のこと。
はてなの質問で『貨幣の生成と崩壊』の話もチラッと出させてもらったのだけど、あのモデルのプログラムをかくと何故あのように株式のチャート(価格の時系列変化)が変動していくのか、直感的に掴める気がした。ランダム行列もブラウン運動のモデルと関係するようだけど、あのモデルでも個々の売買単位を一つの粒子と見立て、その間を価格がブラウン運動しているようなイメージ(大雑把だけど)が浮かんだ。


理論は理論として考えて、やはり実用にと考えたいのは多くの人の一致するところ。
試しになにか解析してみたいと思ったらこちらの本が実際に即していてよいかもしれない。
SASによる金融工学
学生の頃、GA(遺伝的アルゴリズム)で儲かる売買プログラム作ったら面白いだろなと思っていたんだけど、この本にはそれに関しても載っていた(プログラムは載ってないよ)。30ヶ月くらいGAを飼うと大体5〜6%くらいの利益を出せるものになってくグラフがでてた。
ま、ほか色々なデータマイニング手法がまとまってます。SAS使えて興味ある人はどうぞ。