しばらくしていない

外国にしばらく住んでいた人が、日本に帰ってきて何年もすると喋れていたはずの言葉がなかなか出てこない。
しばらく運動をしていない会社員が、駅の階段を急いで昇ると息が切れる。
私は比較的無口なたちなので、喋らないときにはずっと喋らない。何日もひとりでいても大丈夫。でも、そんなでいると久しぶりに人と話をするときに、そのための頭が廻らないことを感じることがあります。
しないことに慣れて、その能力が後退する。
体の筋肉や、頭の使い方、あるいはその状況での振舞い方なんかも。


いま、ここで文章を書いているこの行為。
久しぶりで、どんなだったか。手探りで書いている。
書くことは喋ることと似ているようで、違う。日本ではむかし喋る言葉と書き言葉が別で、今のように口と書きが近いのは近年に入ってから。明治初期の頃までは、喋りと違う書き言葉があった。そのくらい違う。
普段は言葉を話しているんだけど、久しぶりにここで言葉を書こうとすると軽い失語症にかかった気がする。
でも、しばらくすれば治ると思う。
最近すこし、また文章を書きたいと思っているのです。すこしづつなのですが。