満月と黒い雲

あたしは「あたし」とか「わたし」とかより「ぼく」が好きだ。
日記を書くときに、一番率直に自分を表しているようで。
だから、日記の中でだけあたしはぼくになる。


いらない、なにひとつとして。
なんにもいらない。
欲しいふりをしていても、だませやしない。
ぼく自身にさえ、ぼく自身のこと。


満月のあたりに黒い雲がながれてる。
関係のない人が、つながりのない人が傍にいたというだけ。
ぼくがそこを通りかかっただけ。
みかけただけ、みかけられただけ。暗夜の散歩。


満月はだれにでもそのままの姿でいてくれるから、ぼくは好きだ。
満月はだれともつながらない。
満月はなにも必要としていない。
いま、ぼくは。すこし赤らんだ満月を遠くから想っている。